2010年12月29日

ぢっと手を見る健康科学

はたらけどはたらけど
猶わが生活楽にならざり
ぢっと手を見る

正に今の若手研究者を表す言葉だと思いますが、僕も全然楽にならないので自分の手を眺めてみました。
最近は、身体を傷つけず(非侵襲的)に、外からヒトの身体を眺めるだけでいろんなことが分かるようになってきました。

例えば指。
皆さんも自分の右手の指を眺めてみて下さい。
人差し指と薬指の長さの比は胎児期のテストステロンへの暴露量の影響を受けると考えられています。
暴露量が多いと、薬指のほうが長くなると言われています。
で、そこから何が分かるのか?

Coatesらは、トレーダーの稼ぎと指の長さの関係について検討し、その結果、短期トレーダーの場合、右手の人差し指と薬指の長さの比(人差し指/薬指)が0.94以下であれば、ほぼ間違いなくそこそこ稼ぎ、0.96以上になってくると、そこそこ稼ぐ人とあんまり稼げない人が出てきて、1.0以上になると、ほぼ期待薄になることを報告しています。

ただ、これは「短期トレーダー」についてのみ当てはまり、中長期の投資トレーダーには当てはまらないようです。

こうなる理由は分かっていませんが、恐らく、指の長さが胎児期のテストステロンの暴露量に影響されるのであれば、テストステロンへの感受性も高い(レセプターが多い?)とも予測されます。
テストステロンは動物を攻撃的にしますので、短期トレーダーとして成功する素養に攻撃的な性格が必要ということであれば、このような人が向いているのかもしれません。

ちなみに、このデータは男性のみに当てはまり、女性には当てはまらないそうです。
女性は胎児期に大量のテストステロンに暴露されていませんので、指の比もたいてい1.0以上になるとのことです。

研究というと、高価な機器とお金が必要で、侵襲的に内部を調べてって思いがちです。確かにそれはある一面では正しいのですが、先人たちの知見を拝借して人間を注意深く眺めると、それだけでもいろいろな新しいことが見えてくる可能性があることをこの研究は教えてくれました。

ちなみに、僕も自分の指を測ってみました。
0.94でした。
でも貧乏です。

川田

参考文献
Coates JM et al. Proc Natl Acad Sci USA 2009, 106(2): 623-638.
posted by fifss at 15:57| Comment(0) | 豆知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月06日

鍼治療の経験と最近の研究

週6回の練習・トレーニングと週1回の休息,これが私のテニスの基盤を作ったルーティーンだった.高校生だった私は,テニスの技術練習の後に,コート内ダッシュ,メディシンボール投げ,筑波山ランニングなど,非常に激しいトレーニングを行っていた.当時は,勝ちたいという強い気持ちと若い年齢だったとはいえ,毎日のように限界まで追い込まれた身体は,随所に痛みを発するようになり,常にボロボロの状態だった.

そんな私の唯一の癒しが週1回の休息日.休息日は決まって鍼治療に通っていた.鍼は,私にとって,1週間分の筋肉の張り・痛みを取り除いてくれ,私の身体をフレッシュな状態にリセットしてくれる魔法のような治療法だった.

最近,そんな鍼治療に関する記事がNature newsに掲載された.「Acupuncture for mice」と題する記事(http://www.nature.com/news/2010/100602/full/465538a.html)は,鍼治療の効果に関する生化学的データを示したものだった.鍼治療は,長い間医学界から軽視されてきた経緯があるが,今回マウスを用いた研究により,鍼治療の効能に関して説得力のある生化学的知見が得られた.

マウスの右後足に痛みを与え,膝のすぐ下,ヒトでは「足三里」として知られるツボに,鍼を刺してクルクルと回すと,組織が損傷した時に作られ,痛みをやわらげる作用を持つアデノシンが鍼を刺した部位で増加し,痛みを軽減することを示した.一方,アデノシン受容体をもたないマウスではこうした反応は認められなかった.ただし,このメカニズムは現段階で解明されていない.

これで鍼治療の有効性が明らかになったわけでなく,鍼治療に関する効果が,あくまで十分に管理された対象臨床試験においてプラセボ効果を上回らない限り,鍼治療が有効であるとの結論に達することはできない.今後は,今回の成果をもとに臨床試験を実施し,鍼治療による疼痛軽減のメカニズムと臨床効果が科学的に実証されることを願うばかりである.

衣笠
posted by fifss at 22:03| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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