2011年02月22日

矢面に立たされる若手研究者

本年度,身の回りの院生さんに例年よりも多くの学振特別研究員が生まれているように思えます.確かな統計は手許にはありませんが,例年の2倍程度の採用があったと耳にしました.

現在は,教育研究機関で一定期間を働けば全額免除される奨学金(育英会一種)がなく,また,少子化による学生数減少,大学院重点化以降の博士過剰状態,団塊の世代の定年延長による教員ポスト空きの停滞…複合的要因による研究業界の就職超氷河期の今,これからの日本の学術・科学技術の発展を担う若者をサポートしていくうえで喜ばしい出来事といえます.

その一方で,その審査結果の発表が例年よりも随分と遅くなっておりました.審査結果に不安を覚えて,メールをしてくる後輩たちが何人もおりました.

そのなかには,「他のポスドクに今すぐ手を挙げれば決まるのだけど,学振特別研究員の結果も待ちたい.どうしていいか分からない.こんな状態では研究にも集中できない.」と人生の岐路ともいうべき選択に思い悩んでいる方々もいました.

何でこんなことになったかといえば,特別研究員と科研費若手研究が通常規定予算から外されて,”政策コンテスト”枠で申請されていたからです.

この政策コンテストを受けて,科研費若手Aでポスドク研究員を雇用している知人からは「政策コンテストで負けた場合どうなるのでしょう?来年度支給がストップされたらポスドクの雇用を継続できなくなります」との相談の電話がかかってきたりもしました.

そして,このような事態はこれが初めてでなく,「2番じゃ駄目なんですか」の流行語を生んだ第一回目の事業仕分けでも,「若手研究資金(特別研究員,科研費若手研究,女性研究者支援)」が仕分け対象にされていました.

そのとき,私も科研費若手研究でポスドク雇用の内々定を出している方がいたのですが,事業仕分けの判定は芳しくなく,最悪の場合,予算の大幅減額の恐れがありました.そのため予算の確定する年度末まで,その雇用決定を保留せざるおう得ませんでした.

結果は,その後の学術会上げての反対運動に世論も味方し,仕分けの判定結果が全面的に見直されて,当初の内定額が全額交付されました.しかし,その採用を保留した期間,そのポスドクに内定していた方とそのご家族も私も大変な心労を負い,署名運動に奔走するばかりで研究がまるで手につかない時期を過ごすことになりました.そして,その採用が延びてしまった期間に他の研究室からのお話があり,その方はそこへとアプライするために私の研究室の方は辞退となりました.

日本は資源もなく,中国やインドが新興産業国として発展し続けるなか,科学技術を更に発展させ付加価値の高い製品やコンテンツを造り出していかなくてはならず,そのためには若手研究者の養成は急務です.そのための若手研究資金がなぜ”仕分け”に掛けられたのか?そもそも,そこから大いに疑問です.

ただでさえ,先述のように昨今の研究職のポスト不足によって非常に不安定な立場に置かれている若手研究者を政策闘争の矢面に立たせ続けるのは,あまりに非情な仕打ちでありますし,日本の学術・科学技術の発展にとってプラスとも思えません.若者は短い時間で驚くべき成長を遂げるときがあります.そういった騒動のなかで失われた数カ月が将来の日本を活気づける発見・発明の損失に繋がっていた可能性も危惧されます.

若手を予算獲得の武器とするような戦略は,若手研究者のため,そして未来の日本の学術・科学技術の発展のため,是非とも見直して頂きたいと切望致します.
posted by fifss at 09:11| Comment(0) | 研究一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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