2011年05月17日

スポーツを担う未来の子供たちを大切に

子供がマシン?

先日どうしても気になる出来事がありました。ここに書くべきか悩みましたが、talent Identificationのコーナーで広瀬研究員が御話をしてくださっています(http://fifss.seesaa.net/category/7323573-1.html)ので、ここで投げかけを。

その中身ですが。
スポーツをする少年とその親御さんとのやりとり、そのスポーツ少年団の指導者に纏わるものだったので・・・
その話というのは、今まさに、子供を持つ親御さんが悩みどころでもある部分。
教育でも同じようなことが言えると思います。まあ、私自身母親ですからあまりなあ・・・
大きなことは言えませんが:笑
ただ、あまりにもこの状況は?と強く感じましたものですから。
「うちのコーチは一から十まで指示ばかりして子供がマシンみたいに動いている感じ。
って子供が言ってきたの。でもすごく強いチームだからなんとなくやめさせられない
雰囲気なんだけど・・・。」



失敗が許されないスポーツ環境
・・・。
まあ、このコメントの後、チームの状況を色々とお聞きしましたが、びっくりの連続。
とても気になってしまいました。まだこういったチーム、存在するのですね。昔よりも
随分減ったとは思っていたのですが。

失敗が許されない環境・・・子供にとっては地獄です。
ましてやスポーツの場面に進学教育の分野をはめ込まれて二者択一のような状況にまで
追い込まれたとしたら?スポーツには色々な局面があっていいはずなのに。
テストとは違うのに。できないと失敗、だめ、というレッテルをはられてしまう。
これではあるスポーツ競技ををせっかく始めたとしても、やめたくなってしまうのは
当然ともいえるでしょう。

失敗を重ねていきながら、「次どうしよっかな?」という迷いを自分の中で抱えつつ、
最良の方法を自らの力で導き出す、そんなプロセスを指導者と共に楽しめる環境でなかったら
そのスポーツに興味を持ち始めた少年のモチベーションが、持続するはずありません。
・・・迷ったり、失敗したり、そういった経験がなければどうなりますか?楽しく、
しかも賢く、そのスポーツをプレーすることなどあり得ません。自らの頭を使い、
予測しながらジャッジを重ね、少しずつ力を積み重ねて養っていく。
そこをぜひ指導者の方は大切にしてほしいのです。本当に。


子供は調教された動物じゃない
・・・子供が自分なりに試行錯誤をしてそこから選んだことに対し、
あまりにも叱責がひどい監督さん。子供のとった行動が、自分の感覚や取り組みと
合わないからといって全面否定するような指導者さん・・・こういったことが
相変わらず根強く残っているような場合、子供は次からその行為をやめてしまうのは当然です。
こっぴどくそのスポーツ活動中に叱られることなんて、悲しいだけです。
結局これは、指導者の顔色をうかがってスポーツすることになりかねないのです。
そこから生まれる子供のスポーツへの姿勢・・・ろくなものではないはず。
予測や判断の力なんてどこへやら。
自分の気持ちを発信できない人形やロボットのような選手がたくさん育ってしまったら・・・?
将来どうなってしまうのでしょう???調教された動物ではないのです、子供たちは。
この状況が続くと、結果的に「リスクを避けるスキル」ばかりが身について、
負けることや失敗を恐れてしまいます。「その年代で絶対に勝つ」主義はもういい加減やめましょう。その子たちの未来があるのですから。


そのスポーツを嫌いにさせてはいけない
震災の土地にいるいとこたちからみたら、ぜいたくな悩みなのかもしれません。
スポーツを思いっきりしたくてもできない状況にいるのですから。
ただ、これは今本当にある少年が追い込まれていることなので、その子供さんにとっては
心にも身体にも大切なこと。ですので、あえて未来のスポーツを担う子供たちのためにも、
という思いで書きました。
Talent identificationのところ(http://fifss.seesaa.net/category/7323573-1.html)でも、広瀬氏はおしゃっていましたね。

「指導者は選手の現在だけでなく、将来も見据えながら評価し、指導していかなければなりません。特に子供期のスピード、パワーなどの体力要素は、体格や成熟度との関係が強く、子供期には成熟度の個人差が大きいため、成熟度の遅速を考慮して評価・指導していく必要があるでしょう。」と。

まさに少年期のスポーツ実践および指導においては何においてもここを重視しなくてはいけません。少年スポーツの指導者さんは、まずそのスポーツを大好きになってもらうために、たくさんの楽しいしかけや導きをしてほしい。その子の将来のことも考えて。それだけの責務を負っているのです。安易に自分のおもちゃと化しないでほしい。
「好きで上手になりたいなあ・・・」そんな純粋な思いを大切にしてあげてほしいです。
そしてそして・・・。
大事なのはそのプレーをする健康な身体づくりを支えている親御さん。お子さんがマシーンのようだとかんじているのならば思い切ってチームを変えてみる勇気を持つべし!でしょう。勝っているからやめさせたくない、これは親のエゴ以外の何物でもありません。

子供の気持ちを第一に尊重してあげて下さい。お子さんはきっともう限界にいるのです。早い時期にその状況に気づいたお子様に私は心から拍手を送りたい。そしてぜひその賢い感性をつぶさないようなチームに移してあげてほしいものです。

寅嶋(桜井)静香
posted by fifss at 22:50| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月14日

震災と循環器疾患について

3/11から2ヶ月経ちましたが、みなさまいかがお過ごしですか?
我々の病院でも被災地に医療活動をしに毎週交代で行っている状況です。
そこで今回は、地震・震災と心臓病に関連した内容にしてみました。
震災と下肢静脈血栓症、肺血栓症については、新潟地震でかなり有名になったと思います。
いわゆる、エコノミークラス症候群、もしくはロングフライト症候群と言われています。
我々、循環器内科医の間では、もうひとつたこつぼ型心筋症も良く知られており、今回紹介したいと思います。
たこつぼ型心筋症とは、その名の通り、日本人が名付けた病名で、英語でも”Takotsubo cardiomyopathy”です。
1990年に広島市民病院の佐藤先生がはじめて報告しました。心尖部(心臓の先端部分)の無収縮(動かないもしくは、ballooningと言って風船のように膨らんで見える場合もあります)と、それを代償する心基部(心臓の根元の部分)の過収縮(動きすぎな状態)により、左室造影(心臓の動きを撮影するもの)において、収縮期の左心室があたかも蛸漁に用いられる壷のような形態を示すのが特徴です。左心室の壁運動異常は、通常は1〜数週後、遅くとも1か月後には正常化します。
男女比は1:7と女性、特に閉経後に多いのが特徴です。通常は良好な経過をたどるが、稀には、心原性ショック、心不全、心破裂といった重篤な合併症を起こす事もあり、死亡する例もあるので注意を要します。
Takotsubo cardiomyopathyは、別名”Stress-induced cardiomyopathy”とも呼ばれ、発症にストレスが大きく関与していることが知られています。
そのため、震災の後は要注意なわけです。実際、阪神淡路大震災、新潟中越地震でも多くの方が発症しました。

昨年私もreview[1]を書きましたので、ぜひ読んでみてください。
以下は日本循環器学会、日本心臓病学会から市民向けのポスターの一部です。
http://www.jcc.gr.jp/index.html

災害時には、ストレスによる心臓病(たこつぼ心筋症)に注意してください。

このような症状がでたら、医師に相談下さい。
(1)胸の痛み
(2)胸に強い圧迫感
(3)呼吸困難
「たこつぼ心筋症」とは、精神的な過度のストレスを受けた後に、心臓の筋肉が収縮しにくくなり、正常に血液を送り出すことができなくなる状態です。
心臓の動きが悪くなった形が、たこ漁で使われるたこつぼのような形に見えるので病名がつきました。
突然大きなストレスがかかると、自律神経が極度に混乱し、心臓の一部が動かなくなるのです。
阪神淡路大震災や新潟中越地震の時に、被災者の中から主に中年女性の方におこりました。
こうした大きな災害以外にも、口論したとき、肉親や友人の死など様々なストレスによる発症が報告されています。
突然の胸の痛みや圧迫感、呼吸困難は心筋梗塞にも似ていますので、我慢せず相談ください。

[1] Kida K, Akashi YJ, Fazio G, Novo S. Takotsubo cardiomyopathy. Curr Pharm Des. 2010;16(26):2910-7.
ラベル:KEI
posted by fifss at 09:14| Comment(0) | 循環器内科 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月12日

遺伝子レベルからみた時差ボケとは?

こんにちは。

FIFSS客員研究員、「元」ケンタッキー大学の宮崎充功です。
私事で恐縮ですが、この度、4月末日をもちましてアメリカ合衆国・ケンタッキー大学での5年間の勤務を終え、日本へ帰国致しました。
FIFSSのメンバーをはじめ、家族や仲間達からの暖かなサポートにも恵まれ、大変充実した研究生活を送ることが出来ました。
心より感謝申し上げます。

アメリカより帰国して10日ほどが経ち、「時差ボケ」も治まり、新生活の立ち上げにも目処がついてきました。
さて「時差ボケ」とは、異なるタイムゾーンへの移動後に発生する睡眠および消化器系の不良を中心とする健康状態の不良を総称したもので、海外旅行などに伴い、多くの方が実際に体験していることと思います。
この「時差ボケ」の原因として、概日リズム、いわゆる体内時計の乱れが指摘されています。

概日リズムとは?
概日リズム(Circadian Rhythms、サーカディアンリズム)とは、ラテン語のCircaおよびDiemという単語に由来し、それぞれ英語でaround(だいたい)、およびday(1日)を意味します。
つまりサーカディアンリズムとは、約24時間、約1日周期で振動する生物学的サイクルのことを表します。
この24時間周期の概日リズムは、地球上に存在するほぼ全ての生物に等しく存在すると考えられており、バクテリアから人間まで、非常に高度に保存された生物システムです。
例えば人間の場合、睡眠や体温調節、ホルモン分泌といった生理機能の多くは、この生物時計システムとダイレクトにリンクしていることが知られています。

細胞内分子時計(Molecular Clock)
概日リズムに関する研究は、1997年に哺乳動物における時計遺伝子(Clock, Bmal1, Periodなど)が発見されて以来、爆発的な進展を見せています。
その結果、この24時間周期の概日リズムという生物システムは、遺伝子レベルにおいて非常に巧妙に制御されているということがわかってきました。
これら時計遺伝子の制御による細胞内システムを総称して、コアクロック (Core-Clock) と名付けられています。

中枢時計と末梢時計
この概日リズムの制御中枢は、視床下部の視交叉上核 (SCN: suprachiasmatic nucleus)と呼ばれる部位に存在し、身体全体の概日リズムを規定するペースメーカー(中枢時計)としての役割を有しています。
古典的には、SCNが唯一の概日リズム制御体であり、その他の末梢組織で観察される様々な生理的現象の概日リズム変動は、SCNに完全に依存していると考えられてきました(Mster-Slave relationship)。
しかしながら近年では、身体を構成する細胞一つ一つに、それぞれ小さな細胞内時計機構が備わっていることがわかってきました。
現在のところ、概日リズム制御におけるSCN(中枢時計)とその他の末梢組織(末梢時計)との関係は、オーケストラの指揮者と奏者のような関係であると考えられています。
つまり、各組織・細胞に存在する小さな時計達は、それぞれ独自にリズムを刻むことができるものの(各楽器の奏者)、SCNという指揮者が各パートのリズムを統合・同調させることで、身体全体として一つのリズム発振機構が形成されています。

分子レベルから見た時差ボケとは?
いわゆる「時差ボケ」の原因としては、一般的には、「体内時計と実際の時間がズレてしまっているから」と説明されることが多いのですが、遺伝子レベルではさらに複雑な現象が引き起こされています。
例えば研究室の中で飼育されている実験動物達(マウスやラットなど)は、通常12時間毎の明暗サイクルの下で管理されていますが、ある日突然この明暗サイクルを進めたり(もしくは遅らせたり)することで、擬似的な「時差ボケ」状態を作り出すことができます。
この時に中枢時計や末梢時計のリズムを解析すると、いわゆる時差ボケの状態では、中枢時計と末梢時計がそれぞれバラバラのリズムを刻んでしまっている(場合によっては完全にリズムを失っている)ことがわかってきました。
つまり遺伝子レベルからみた時差ボケの状態とは、単純に体内時計と実際の時間がズレてしまっているというだけではなく、身体の各部位にある時計達が、それぞれバラバラになってしまった状態であると考えることができます。

概日リズムの制御異常と疾患
これまで多くの疫学的研究から、睡眠や食事のタイミングなどのライフスタイルと、肥満や糖尿病を含む生活習慣病の発症との間に密接な関係があることがわかっています。
睡眠や食事のタイミングを一定に保つことの難しい時間交代制勤務(夜勤、朝勤など)の労働者、いわゆるシフトワーカーを対象にした疫学的調査の結果、心血管系疾患や糖尿病など、様々な疾病への罹患率が有意に高いことなどが報告されています。
また実験動物を用いた基礎研究領域における検討からも、時計遺伝子に変異のある動物において様々な異常形質(肥満、糖代謝能異常、サルコペニア様変化など)が観察されています。

このように概日リズムという生体機構は、身体の生理的機能や健康状態の維持において、これまで考えられてきた以上に重要な生物システムであることがわかってきました。
最近では、「時間医学」と呼ばれる研究分野も注目を浴びています。
今後、これらの知見をスポーツ・健康科学分野に応用することで、より効率的なトレーニング効果の獲得などを目指した「時間トレーニング」といった、新たな分野の開拓が成される日も近いかもしれません。


Mits


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Mitsunori Miyazaki, Ph.D., RPT
http://sites.google.com/site/mitsunorimiyazakiphd/
posted by fifss at 11:03| Comment(0) | 睡眠と生体リズム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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