2009年12月14日

抗加齢研究

こんにちは。Fifss研究員の川田です。
私は生体組織の可塑性(かそせい)に興味があり研究しています。

可塑性というのは身近な例で言えば、「骨格筋(筋肉)は適切に鍛えれば大きく、強くなり、鍛えなければ小さく、弱くなる」といった可逆的に変化可能な現象として理解できます。
ヒトは骨格筋だけではなく、多くの組織で可塑性を有しています。この能力を利用して、多くのヒトは高齢になっても組織の機能を低下させないように運動や栄養摂取、休養に気を遣い、時間やお金もかけています。

では、何故ヒトの組織にはこのような可塑性があるのでしょうか?それは、「細胞には余力がある」ということが前提条件になります。
もし、この前提条件が成立しなければ、例えば高齢者の方々に、「寝たきりにならないように筋肉を鍛えましょう」と言ったところで、一生懸命鍛えても効果は期待できず、その努力は無駄になってしまいます。

ここで一つ、「歳をとっても細胞自体には余力がある」ということを示す面白い研究をご紹介しましょう。
ConboyらがNature誌(2005)に発表した研究です。運動すると筋肉は壊れますが、壊れた筋肉は筋肉の元になる筋衛星細胞の増殖により修復され、より強く大きくなります。しかしながら、加齢に伴い、この修復能力は落ちてきます。彼らはこの修復能力の低下は、筋衛星細胞自体が歳をとってしまうためなのか?それとも、細胞自体は元気だが、その他の外部要因(ホルモン分泌等)によるものなのか?を確認するために実験をしました。

その方法は、若いマウスと老マウスの血管をつなぐ手術をして循環を共有(パラバイオーシス)させるというものです。
筋肉の老化にはNotchシグナルという細胞内情報伝達系の抑制が関与していると考えられていますが、この手術により老マウスの筋肉の元になる筋衛星細胞のNotchシグナルの活性化と増殖再生能力が若いマウスと同程度まで回復します。

この研究から、加齢とともに骨格筋が萎縮するのは、筋肉の細胞自体には余力があるにも関わらず、血液中に含まれる液性因子(ホルモン分泌等)の影響が大きい可能性が示唆されます(骨格筋を支配する運動神経細胞の細胞死も原因ではあります)。

このことから、高齢者が筋トレで充分な効果を得るには、どのようなトレーニング方法が高齢者のタンパク同化ホルモンの分泌を上昇させるのか?といった事も重視する必要があるものと思われます。
私は、骨格筋に限らず、細胞の余力を充分に引き出すには生体にどのような刺激を与えればいいのか?について研究を進めています。これらの話題については、次回から少しずつご紹介できればと思います。

余談ではありますが、ドラキュラが何百年も生きられるのは、若い女性の生き血をすすることにより、Notchシグナルを活性化させ組織の老化を防いでいるからだと思われます。
posted by fifss at 10:23| Comment(0) | 抗加齢 筋肉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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