2010年05月17日

うちの子は早熟?晩熟? どうやって評価する?

ご無沙汰しております。広瀬です。前回の登場から半年がたちました。早いものです。半年前に告知していたとおり、今回は早熟や晩熟といった「生物学的成熟度」を評価する方法についてご紹介します。

 子どもの成熟度を評価する方法はいくつもあります。主に用いられているものは

 歯牙成熟
 性成熟
 骨年齢
 PHV法
 最終身長予測法

などです。

 歯牙成熟は乳歯、永久歯の本数などで成熟度を評価します。皆さんがすでにご存じの通り、成長にしたがって乳歯が永久歯に生え替わるので、すべて永久歯になった時点が完全に成熟した状態です。お気づきのことと思いますが、小学校高学年では多くの子どもが永久歯に生え替わっているため、この方法は思春期以降の成熟度評価には不向きです。

 次に性成熟ですが、これはTanner Stageとも呼ばれ、睾丸や乳房、陰毛の発達状態で評価をします。この評価法は倫理的な観点から一般化することが難しい評価法といえます。以上のような問題点を鑑み、現在頻繁に用いられている方法が「骨年齢」や「PHV法」です。

 まず骨年齢について紹介します。子ども期の骨(長管骨)の端には、成長軟骨があります。レントゲンを撮影したときに、骨の端が黒く透けているのを見たことがあるかもしれません。この黒い帯が成長軟骨で、これが骨に変わる(白くなる:軟骨内骨化)ことで縦軸方向に骨は伸びていきます。したがって大人の骨はすべて白くなっているのです。骨年齢は左手関節と手部の骨の成長軟骨や、その周囲の骨の形状をみて、点数化して年齢を算出します。近年ではMRIを用いて評価する方法も活用されています。

 このように暦の上の年齢(暦年齢)でなく骨年齢が活用される例として、国際大会での年齢詐称(意図する、しないに関わらず・・・)の判定が挙げられます。サッカーのユース年代の国際大会では、一般的に年齢をパスポートでチェックします。しかし発展途上国などでは、産まれてから出生届が遅れてしまい、実際の年齢が規定年齢よりも高い選手が出場していることもあります。このような問題をチェックするために、ドーピングコントロールと同じように抜き打ちで骨年齢をチェックすることもあるのです。今後ユースオリンピックなど子ども期の世界大会が盛んになるなかで、(うっかり?)年齢詐称の問題は無視することができなくなるかもしれません。

 一方、骨年齢はレントゲン撮像時の被爆の問題や、評価に熟練した技術が要求されるという課題があります。従ってスポーツ現場で簡便に用いることができません。しかし、筋力やスピードなどの体力要素は暦年齢よりも骨年齢をはじめとした成熟度との関係が強いことからも、効果的・効率的なトレーニングを行う上で、子どもの成熟度を評価することは重要です。そこでスポーツ現場で簡便に活用できる方法としてPHV(Peak Height Velocity)法を紹介します。

 おそらく子ども達は毎年学期はじめの健康診断で身長や体重を測定していると思います。つまり学校に通っている子どもは、必ず一年間にどの程度身長が伸びているか(年間身長増加量)がわかるはずなのです。そして子どもは男女問わず、必ず急激に身長が伸びる、いわゆる身長増加のピークの時期があります。このポイントをPHV Age(PHVA)と呼びます。ちなみに女子は男子よりもPHVAの発現年齢が1〜2歳早いようです。また同じ性別内でもPHVAの発現年齢には個人差があります。これが早熟や晩熟を表しているともいえます。

 次に、PHVAの前に身長増加が著しくなり始める時期をTake Off Age(TOA)とよび、PHV後の、年間身長増加量が1cm未満となる時期をFinal Height Age(FHA)とよびます。この3点を軸にして・・・

TOA以前をPhase1
TOAからPHVAまでをPhase2
PHVAからFHAまでをPhase3
FHA以降をPhase4

と分類するのです。私達のような大人はすでにPhase4にいます。諸々の報告からPhase2の時期には持久力を、Phase3以降には筋力を発達させるようなトレーニングを積極的に導入することが勧められています。

 このように「生物学的成熟」というのは各種体力要素や体格の大小を通じてパフォーマンスの優劣に影響します。従って同じ暦年齢や学年の子どもを対象とした場合でも、評価やトレーニングを全て同じにすることは、必ずしも適切な評価やトレーニングでないことがあるのです。子どもを対象とした指導者は、上述した成熟を考慮することも必要ですね。
 
 次回は「成熟度」や「骨成長」とスポーツ傷害の関係についてご紹介したいと思います!!!


今回の内容に関連した<手前みそ的>文献・雑誌
広瀬統一、2010、成長期における測定と評価、月刊トレーニングジャーナル1月号

広瀬統一、2009、発育・発達に合わせたトレーニングが大切だ−ジュニアにおける基礎体力トレーニングの考え方−、月刊コーチング・クリニック4月号

広瀬統一、2006、早熟・晩熟を見極め発育発達に応じたトレーニングメニュー、月刊コーチング・クリニック

広瀬統一、福林徹、2006、骨成長と思春期、子どもと発育発達、3(4)、p215-219

山内潤一郎、辻喜晶、2002、サイエンティフィック“ラグビー”トレーニング(15): プロフェッショナルリーグと育成システム(上): 競技力向上・育成の総合システム、 月刊トレーニングジャーナル9月号
posted by fifss at 00:27| Comment(0) | うちの子は早熟?晩熟? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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